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zoom RSS ● 書籍版 SP

<<   作成日時 : 2011/11/01 12:54   >>

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 書籍版の「SP 警視庁警備部警護課第四係」は、金城一紀の原作小説、ではなく“脚本”。台詞とト書きによって構成されたテレビドラマ SPの記録的作品、“シナリオ本”である。

 金城一紀は小説家。原作小説として「GO」や「フライ,ダディ,フライ」が映画化されている。「SP」という作品は小説が先ではなく、テレビドラマとして企画されたオリジナルドラマ。その企画を、金城一紀本人がテレビ局に持ち込んだのが最初のきっかけだと言う。だからスタッフロールには「原案・脚本」という肩書きで金城一紀の名がいつも流れる。

 「書籍版 SP」は台本をそのまま書籍化したような文面(実際の台本がどういうものかわからないけれど)。ページ四分の一あたりの下段には脚注用スペースがあり、そこに金城一紀の解説が本編とリンクした形で添えられている。脚本構想中の事であったり、物語の背景の補足であったり、オンエアには反映されなかった意図であったり、逆にオンエアで付け足された部分の説明であったり。

 撮影現場においてのやり取り等にも多く触れていて、岡田准一、堤真一、真木よう子等、役者達の裏話も書かれている。特にアクションシーンでは、金城一紀と、主人公“井上”役の岡田准一とが、ふたりでアクションを作り上げていた様が知れる。岡田准一はアクションの手本を他へ見せることもあったそう。引っ張る側にいたことが解る。他にも金城一紀が岡田准一の技術を信頼して、大胆にアクションシーンを書いたこと、それを岡田准一が見事に期待に応えていたこと等にも触れる。ドラマ本編以上に、岡田准一が格好良く感じてしまう。

 最初に脚本が書かれた“第一稿”やキャラクターの初期設定、配役や監督の助言で変更された要素。放送が始まってから書き起こされた後半。ドラマが流動的に造られていったことが、金城一紀の脚注で上手いこと解る。著者が現場で感じた「ものをつくる」ということの高揚感が確かに伝わってくる。

 特に公安部公安第一課・田中一郎役に当てられた野間口徹の影響力は強かったようで、配役後に金城一紀の中で“田中ブーム”なるものが起こっていたそうだ。最終話の真木よう子の一番の見せ場、彼女の役“笹本”が得意とされている射撃のシーンが、第一稿では田中一郎の活躍シーンであったらしい。誰得か。
 金城一紀には田中一郎スピンオフドラマを造りたかったほどのブームが来ていたらしいが、それがドラマスペシャル“革命前日編”でひとつの形になった、という事だろうか。“活躍”は出来なかったけれど、野間口徹らしい魅力が出ていた気がする。野間口徹ファンに、“革命前日編”はお勧めです。

 “革命前日編”と言えば井上と笹本の“デートシーン”。金城一紀は「書籍版 SP」の脚注でしつこいほどに「二人が恋に落ちることはない」、「SPで恋愛を描くつもりはない」と書いていて、ふたりを“男女の意識のない非恋愛関係”として描こうとしているのがわかる。確かに台本は“男女の友情”であったり、“良き先輩・後輩”、“信頼すべき仲間”を見せようと書いているのだろう。しかしオンエアでは、一線を越えないように保たれた、危うい関係にも見える。演出と、真木よう子の演技がそう魅せている気がする。答えは無いのだろうけど、“井上と笹本”の関係は深みがあって面白い。

 書籍版はテレビドラマシリーズの三年後に造られたもので、映画の少し前。映画のことには触れていないけれど、そこまでの展望が覗える、良質な“ドラマおさらい編”。これを楽しむにはドラマを見尽くしていることが前提だと思う。DVDの“オーディオコメンタリー”的な作品。映画シリーズを観る前に読むのがお勧めです。ドラマを全編見返すのは大変だけれど、文庫なら場所も選ばず読める。けれどこれを読んでいると、テレビシリーズをまたじっくりと見返したくなる罠。


 脚本家の目から見た、アクションドラマの制作現場。それらが臨場感を伴って知れる、とても面白い書籍です。


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